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作業療法

「人生100年時代」の盲点──健康寿命と認知症発症年齢から見える“自由な時間”の現実

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「人生100年時代」や「老後2,000万円問題」など、私たちは“長く生きること”に意識を向けがちです。

でも、作業療法士として高齢者と日々接している私には、もっと気になる事実があります。

それは、健康で自立して生きられる時間は、思っているよりずっと短いということです。

健康寿命と平均寿命の差──実は10年前後もある

2022年の厚生労働省のデータによると、

男性の平均寿命:約81歳 男性の健康寿命:約72歳

つまり、約9年間は「要介護」や「自立して生活できない状態」で過ごす可能性があるということです。

認知症の平均発症年齢は「約81歳」──健康寿命と重なるタイミング

さらに注目したいのは、認知症の発症年齢。

日本老年医学会などのデータでは、認知症の平均発症年齢は次のように言われています。

男性:約81歳 女性:約83歳

これはつまり、ちょうど平均寿命とほぼ一致しており、健康寿命を過ぎた頃に認知機能も一気に落ちる可能性があるということです。

私たちは「まだ元気だから大丈夫」と思いがちですが、現場では80歳を超えると急激に「動けない・分からない」が進行する方が非常に多くなります。

作業療法士の目線:「使える時間は思ったより短い」

私はこれまで、元気だった70代の方が、80代に入って急に歩けなくなり、認知症が進み、最終的にはベッド上で寝たきりになる、というケースを何度も見てきました。

「お金はあるのに、使えない」

「話す相手はいるのに、話せない」

「自分で選びたいのに、選べない」

そんな高齢者たちの姿を目の当たりにすると、「人生は長さだけでなく、“自分の意思で過ごせる時間の長さ”が本当に大事なんだ」と痛感します。

健康寿命を延ばすこと=「自由な人生」を延ばすこと

健康寿命を延ばすことは、

介護を遅らせること 認知症の進行を抑えること 最期まで自分らしく生きること

につながります。

それには次のようなことが効果的です:

日常的な運動(ウォーキング、ストレッチなど) 社会参加(地域活動、趣味、会話) 食生活と口腔ケア 認知課題(読書、パズル、日記など)

結論:80歳が一つの転機。だから「今」をどう生きるかがすべて

多くの人が「年金をいつからもらうか」や「老後資金をいくら貯めるか」で悩みます。

でも、私は声を大にして言いたい。

「そのお金、あなたが元気なうちに使えますか?」

年金の繰り下げや老後資金の準備も大事ですが、

“自由に動けて、考えて、楽しめる時間”は80歳までかもしれないという現実を前提にして考えてほしいのです。

おわりに──人生の“ピーク”は意外と早いかもしれない

健康寿命や認知症の発症年齢をふまえると、

人生の本当のピークは「65〜75歳」あたりかもしれません。

だからこそ、

「いま何をするか」「いま誰と過ごすか」「自分のためにどう時間とお金を使うか」

それを意識して生きることが、人生の充実度を大きく左右します。

作業療法士としての立場から、私はこれからも「健康で動ける時間の価値」を発信していきたいと思います。

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